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石渡氏の本のこと

石渡氏の新刊『たった4年! 学生大家から純資産6億円を築いた私の投資法 借りて増やす技術』のこと。

前著の『学生でもできた! 逆転不動産投資術 低所得・保証人無しで融資を受けて専業大家』について、「誤解に基づく批判があるので、また改めて書きます」、とか言っておきながら、いつの間にか新著が発行されており、しかもそれからも、しばらく経ってしまいました・・・。

中身については、方々で語られているとおりです。
彼自身、前著の誤解を解くことを第一義に置いていたのかな、という気がしますが、その狙いは十分に果たされていたと思います。
前著への言及が多いためか、新刊の発売以後、前著も売れ始めたのだとか。

ですので、前著の解説はもう要らない、というかそっちを読めば彼自身による反駁を聞けますし、なおかつこの本の紹介も、ほとんど大手のブログでされつくしている。
ということで、この期に及んでブログで取り上げるからには、切り口を変えないといけません。
どうしたらよいでしょうね・・・。

というわけで、今回は、この新著をネタに、この「石渡式」が通じる前提について考えてみようかと思います。

石渡式の要諦を一言で言うと、「不動産賃貸業を生業とする事業者として金融機関と付き合い、事業性融資として、土地値で買えるアパートの購入代金(+α)を引っ張る。」ですね。

寺尾氏は自身のブログの中で、これで不動産投資の潮目が変わるかもしれない、というようなことを書いていらっしゃいましたが、自分はそこまでは考えていません。
誤解のないように敢えて書きますが、本の内容が間違っているから、とかそういう話ではありません。

内容は、全く以て正しいです。
少なくとも彼の投資しているエリアとこれまでの相場付きからすると。

自分が、潮目が変わるまではいかないだろう、と考えている理由は、そもそもこの「石渡式」で不動産投資に取り組める層というのは、それほど多くないだろう、という点と、「石渡式」が通用する前提が、それほど普遍的では無い(という言い方が語弊があれば、エリアを選ぶ)という点です。

まず、前者から考えてみます。

これまで不動産投資教材のターゲットとなってきたのは、中位から高位のサラリーマン層です。
年収は600万から800万、年齢的には団塊ジュニア世代で、郊外の賃貸あるいは分譲マンションから、満員電車で都心に通うサラリーマン、というところでしょうか。
給与収入だけでは、豊かさを実感するまでには至らず、将来の不安もある、と。
出版する側からしても、ここをターゲットにすると冊数が稼げるので、数多くの書籍・教材が出版されているわけですが、これらの層の人で、平日の昼間に、地元の信金さんとべったり付きあえる人がどれほどいるでしょうか。
たとえ自分の住民票があるエリアで、うまい物件が見つかったとしても、そこをカバーする信金さんに顔を出して、逐一経営を説明しながら、融資を取り付けていく、なんていうのは、ちょっと難しいのではないでしょうか。
平日の朝7時から夜10時まで、職場にいる人間には、高いハードルですね。

ですから、逆説的ですが、地元から一歩も出ないニート学生とか(石渡さん、済みません)、町の工場で働くブルーカラーの兄ちゃんとか、そういう方のほうが、この手法に関しては取り組みやすいのですね。

「サラリーマンでもできる不動産投資」というテーゼが、アパートローンの場合、実は「サラリーマンだからできる不動産投資」だったように、前著のタイトル「学生でもできた、、、」は、実は「学生だからできた、、、」であった、ということになりましょうか。

となると、この本を手に取った読者の多くは、どうなるか。
不動産投資を始める前の独身の人間だったら、どれ、この手法で、人生の大逆転を狙ってみるか、となるかもしれませんが、
家族もあり、すでに物件を所有していて、しかも個人名義でスルガでマックスまで借りこんでいたりする人だったらどうでしょう。
利回り9%程度の物件で、4.5%で借りている、とかになるとキャッシュフローも出ないので、不動産からのお金が給与収入を上回るレベルには到底至らず、会社を辞めて石渡式に賭けてみよう、とはならないのではないでしょうか。
ましてや奥さんを連帯保証に差し出していたりなんかすると・・・。
すると、この手法を試す場のないまま、石渡さん凄いなぁ、という感想で終わってしまう。
あるいは妬み嫉みの類の感想とか。

「サラリーマン大家と専業大家の間には、深くて長い溝がある」というのは、考え方自体というよりは、所与の条件の違いを、両者が認識できないことによるのでしょう。
その溝を埋める一冊ではあります。
が、サラリーマンの側から向こうに飛び越えるのは、これまた難しいな、と。
いっそのことサラリーマンを経ないほうが、可能性あるみたいじゃん、みたいな。
実際、そうだったりすることもあるのですが・・・。

近年、爆発的に不動産投資家が増大した背景には、前述のような団塊ジュニア世代の漠とした将来への不安がある一方、他方では、銀行の側に住宅ローンの延長線上としての定形化されたアパートローンというものがあり、また、そこに上手くはめ込める客を多く持った不動産仲介業者さんが台頭してきたことがあります。

融資付けが得意というか、本来は銀行がやるべき審査をある程度済ませた上で、客と物件を持ち込む収益不動産に強い不動産業者さん、というのがいくらか出てきて、その発言力も大きくなると、銀行の側も、億単位の金であろうと、決算書を見て、とか、人を見て、融資の可否を決める、とかいうことはなくなり、その業者が持ち込んだ案件ならOKという形になります。
それが、住宅ローンの延長線上にあるアパートローンという商品です。
そもそも、残債が少ないほうが借りやすい、ということは、業績がゼロのほうがよい、ということですからね。
通常の融資プロセスとは真逆にある。

じゃあ、金消は来週の金曜夜で。
あ、物件と人は?
あ、はい、わかりました。
じゃあ、当日よろしくお願いします。
表は閉まってますので裏からで。
ええ、携帯で呼び出してください。
みたいな。

これで1億の融資実績、みたいな。

借りる人も、金消契約のときに初めて金融機関の担当者と会う、くらいの感じで。でも、全然問題なし。
金消契約の日だけ、少し早めに仕事を切り上げる、と。
下手すると、実際の物件の決済日ですら、当人不在でもOKだったりしますからね。

まあ、不動産屋さんを通さず、個人で持ち込んでも、緩かったころのSMBCなんて、同じでしたけれども。
まずは、一般職の行員がまずは対応する感じで、
構造は?築年は?満室時家賃年収は?
で、源泉徴収票持ってきましたか?
くらいのもので、
あ、これなら大丈夫です、みたいな感じで、まあ、審査なんて無いに等しかったのではないでしょうか。
今だってそんなにかわらないのでしょうけれども。
基準となるハードルが高くなっただけで。

とまれ、アパートローンというのは、こんな感じで、その後、法人として普通に融資の申込をするようになってから、その違いに戸惑いました。
「社長」「社長」と呼ばれはするものの、一向に融資の話は進展しない、みたいな。

石渡氏の前著でも、彼自身がどのように金融機関を開拓してきたか、というのが、ある程度述べられていたのにもかかわらず、
事業性融資なのでアパートローンの常識は通じませんよ、という、そもそもの話が読者に伝わっておらず、
あんなのはあり得ない、とか嘘だ、とかいう評価が少なからずありました。

新著では、数々のブログでの書評を見ても分かる通り、そのそもそもの部分は伝えることに成功しているようです。
ただ、今度はその英知を使えるのかどうか、という話になったということですね。

では次に、後者の「石渡式」が通用する前提が、それほど普遍的では無いという点に移りたいと思います。

これは、エリア的なことになりますが、大きく分けて二つ、相場そのものの話と、利用できる金融機関の数の話になります。

前者については、もしかしたら、石渡式で物件を探そうと思った方がすぐに感じることかもしれません。
土地値で物件を買うのが現実的であるエリアを見つけるのは、意外と難しいな、と。
これには2つのケースがあります。

1つ目は、ここでいう土地値というのは、銀行融資を前提にしている以上、路線価をベースに算出した、銀行の評価上の土地値ということなので、そもそも、路線価と実際の売買値がかけ離れているエリアでは難しいですね。
都心の一等地でなくても、路線価などまったく当てにならないというところは、意外とあります。

2つ目は、路線価ベースで計算した土地値での利回りが現実的でないエリアでも、「石渡式」は難しくなります。
積算で計算した値段(ボロアパートでは建物価格は無いので、土地の積算値)と、収益還元での値段がある程度拮抗しているときに、積算以下で買う、という選択肢が現実味を帯びてくるわけです。
土地値がほとんどないようなエリアでは、積算が足りてないから、足りるレベルで指値します、といったところで、それが利回り25%になってしまう、とかいう事態も発生したりして、それでは、買付も受け取ってもらえないのではないでしょうか。

まあ、そういうエリアで賃貸づけも問題なさそう、とあれば土地から仕込んで、新築で収益物件を建てるか、建売をするかするのがよいのでしょうけれども。

また、逆に土地値が高すぎて、収益還元ではとても回らない、という場合は、そもそも土地値で買っても経営が回らないので、却下ですね。
以前、不動産屋さんからの物件のセールスレターで、「利回りは低いですが、積算はあります!」というのを見たことがありますが、そんなのは、こちらからしたら、意味無いですよね。

後者の金融機関の数については、地方に住んでいて、地方で投資を考えた人にとっては、頷ける話かと思います。
投資をしようと思ったエリアで、使える信金の支店が一つしかなく、しかもそこの支店長が、あんまり不動産賃貸業に前向きでない、となると、ちょっとお手上げですね。
ある程度の都市部であれば、この信金でだめならほかの信金、というようなことができますが、その選択肢がないエリアでは、その次、が無い。となると、拡大も難しい。

こういった観点からみると、ゼロ年代後半の神奈川県の郊外エリアというのは、「石渡式」がうまくはまった希有なエリアだった、と言えます。
土地値での積算で指値をすると、利回りが10%以上になり、融資を打診できる金融機関も数多くある、と。


整理すると、本人の問題、エリアの問題、両方ありますが、「石渡式」で臨むには、

1.平日の昼間に時間が取れること。
2.土地値での利回りが、収益還元法でも現実的な利回りになること
3.星の数ほど利用できる金融機関があること

が必要ですね。

こういった前提条件を鑑みて、「石渡式」を使えるエリアをサーチしたのち、そこに移り住んで不動産賃貸業を始める、というくらいのことを考える人が出てきても、面白いんじゃないかな、と思う今日この頃です。

路線価
路線価と実勢価格との乖離度
容積率
平米あたり賃料水準
地域金融機関の本支店数

を、地図でプロットできれば、ある程度絞れますね。

さて、誰かやってみませんか?

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プロフィール

投資家K

投資家K: ロスジェネのど真ん中世代。三児の父。

しばらく賃貸経営とサラリーマン稼業の二足のわらじを続けていましたが、数年前にサラリーマンを卒業し、賃貸経営専業となりました。

これまでに不動産投資関連のセミナー・本・教材に費やした額は、数百万に上ります。

これからも不動産投資教材を検証していきます。

連絡先はこちら↓
lti_investor_k@yahoo.co.jp

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